葬式で泣いた話し

こちらも紙のメモをデジタル化しておく。

Hさんという、20ほども年上の友人がいる。

奥様のY子さんが亡くなった時の葬式での話しである。

お二人に子はなく、2人で仲良く生活なさっていた。

Y子さんが23歳の時に、先に東京に来て生活していたHさんが呼び寄せて結婚したのだという。

そこから、36年にわたる乳がんとの闘病生活、その末に天に召された。

Hさんの参列者への挨拶があった。話しの筋は、よく覚えていない。

だがおそらく、HさんはY子さんの乳がんの判明後に東京に呼び寄せて一緒になったのだろうと思う。

それから36年、二人はいつも共にあった。僕自身は二人のそんな断面を、両手で余るほどしか見てはいない。

それでもおしどり夫婦とは彼らのことをいうのだと思うに足る夫婦ぶりであった。

Hさんはその挨拶のなかで、Y子さんのことを、「慈愛に満ちた妻」と表現されていた。

Y子さんは、自分の抱えている重い病があってなお、他人の体調を気遣うような方だった。

最後のHさんの、Y子さんの棺に向かって呼びかけた言葉が忘れられない。

「Y子、愛している。今までありがとう。ゆっくり休んでください。」

愛の言葉は過去形ではなかった。

参列者の誰しもが涙したのであった。