今年は外出も少なかった割には、チョコが豊作だった。無論全て義理チョコである。
毎年この季節になると思い出す。とても恥ずかしい話しだが死ぬまでに吐き出しておきたいと思う。
高校のとき、ある先輩の女性に恋をしていた。
あるバレンタインの日、その先輩女性からチョコをもらった。
どうやら、好きな同級生の男子に渡せなかったモノらしい。
好きな女性からチョコがいただける。ハナタレ小僧の僕にはそれだけで飛び上がるほど嬉しかった。
中身は上等なブランデーボンボンだった。1本1本がブランデーの瓶の形をしていて、きれいな銀紙に包まれていた。5本くらい入っていたと思う。
3年以上、その女性への片思いは続いていた。その間中ずっと、そのチョコは本棚に飾られたままであった。
勿体なくて、どうしても口に入れる気になれなかったのだと思う。あるいはそのチョコは僕にとって、「酸っぱいブドウ」だったのだろうか…。
恋から覚めて(というよりは諦めて)しばらくしてから、「そうだあのチョコを食ってみよう。」と封を解いてみた。
銀紙をはがすと、、、、白い粉と粒を吹いた、得体のしれない塊が出てきた。
僕は、それまでとは違う理由で、ついにその物体を口に入れることはできなかったのであった。
あま苦い恋の思い出である。
十数年後、二十代後半のとき、恋をしてはいけない女性と恋に落ちた。
その女性からは機関車トーマスのチョコをもらった。
ボール紙の台紙にプラスチックで張り付けてある、 駄菓子のコインチョコの一等のようなやつだ。
それはいつか食べようと思って食器棚の隅に立てかけておいた。また数年間、今度はそのチョコの存在をすっかり忘れてしまっていたのだった。
その女性と会わなくなってしばらく経ったある日、ふとチョコのことを思い出した。
保管場所も忘れていたので見つけるのに30分くらいかかった。
発見したときは、微妙な心持ちだった。
なんとなく、嫌な予感に襲われつつ、表のプラスチックを剥がす…。
チョコは見た目は無事であったが、口に入れると油の分離した、なんとなく嫌な味になっていた。仕方なく廃棄した。
その女性とお別れしたときの、なんとなく少し後味の悪い感じが蘇った気がしたのだった。
それ以来、貰ったものはチョコに限らず、すぐ頂くようにしている。